2022/02/24 12:22


はじめに
画像から観測できる作物の特性の研究で、農業のDX化を推進するQuantomics社。今回、品種改良のために必要な作物の育成データを取得する「自立走行型作物数カウントロボット」開発のため、Quantomics社様よりCuGo導入の背景や感じた点、今後の展望などを伺いました。

CuGo導入に至った背景
現在開発しているのは、農地での作物の生育調査を目的にした自立走行型作物数カウントロボットです。
Quantomicsは、「作物の生育状況」を画像から正確に把握する独自技術を持っています。作物の品種改良をする栽培試験時、この技術を利用して試験中の作物の育成状況を診断することで、どの品種が良いかを的確に判断でき品種改良の効率化が可能です。

Quantomics 代表取締役 坂本様

品種改良において、育成状況の確認のために作物の数をカウントする作業があります。例えば小麦の場合、穂の数を数える作業が必要です。小麦は夏に穂を付けます。そんな炎天下に、小麦の穂の数を一つずつ数える作業がいかに過酷かは、容易に想像がつくと思います。

栽培試験ではどの作物でもできた作物の数のカウントは必要で、広大な農地を見回って数を数える作業は本当に地道で大変です。そのため、品種改良を行う農業試験場は、どこも人手不足に直面しています。

Quantomicsは、このような「作物の生育状況」のデータ収集をロボットで代替することで、
・過酷な作業からの解放
・人手不足の解消
・データ解析による品質改良の精度向上
を目指しました。
ロボットによる代替の方法は複数考えられます。ドローンによる撮影、定点カメラ、農地内の自立走行ロボットです。この方法のうちドローンは解像度不足で解析ができなかったり、定点カメラは限られた範囲の作物の数しかカウントできないという問題がありました。

農地内の走行するカメラを搭載した自律走行ロボットが最適だと判断し、これを実現するため不整地走行向けのプラットフォームを検討し始めました。

不整地走行のプラットフォームとしてCuGoを選んだ理由
不整地向けクローラとして、農地に適したクローラでかつサイズがちょうど良いこと、簡単に取り付けられそうだったこと、改造のしやすさからCuGoは今回の目的にぴったりだと思い、まずは1台試しで使ってみようと導入しました。また自律走行型作物数カウントロボットが実用化され、将来的に量産する際の製造コストも考えると安価で実現性が高かったことも決めてでした。


農地を走行するCuGo

実はCuGoを使う以前は、農業用の運搬車を利用し、農地内を歩いて撮影していました。運搬車は重く、広い不整地の農地を引張って動かすのは大変で現実的ではないと実感していました。

イメージ写真

CuGoであれば自律走行のプログラムも自社で自由に開発できて改造がしやすく、テスト開発をすぐにスタートさせられました。

CuGo導入時に感じた点
購入したのは、ラジコンタイプのCuGo遠隔操作ロボットキットです。取り付けに必要なアルミフレーム等の部品やコントローラがキットになっており、自分で部品を用意する必要なくすぐに組み立てられました。


CuGo遠隔操作ロボットキット

また、マニュアルがしっかりしていて、分かりやすかったです。組み立ては誰でも出来るものだと感じました。


「自律走行型作物数カウントロボット」テスト開発機

想定通り改造がしやすい点も、とても良かったです。CuGoを利用してのカウントロボットを制作する際に特に重要だったのは、カメラの安定性でした。揺れがあると画像解析が出来ないからです。

CuGo導入後の効果
テスト走行を1、2回してみたところ、イメージ通りに走ってくれました。走破性が非常に高く、ハウス内や通常の畑は問題ないのですが、土がとても柔らかい場所まで楽々と走破するため、そのような場所を走る時はカメラが揺れる場合がありました。
どんな場所でも安定して撮影が出来るよう、揺れ防止のためのカメラ側の調整をしたいと思っています。


トマト農園内をテスト走行する「自動走行型作物数カウントロボット」

カメラの調整とともに、これから長時間のテストをしてバッテリーの耐久性の他、ぬかるみの走行性、小石の上の走行性などを確認予定です。バッテリーは不足があれば増設を検討しています。走行性に関しては、テスト走行を見た限り大丈夫そうだと感じています。

また現在は自律走行プログラムを自社開発し、改良している最中です。自律走行だと畝にあたって止まることもあったため、内輪差外輪差を確認しながら、きちんと止まらずに自律走行できるプログラムを組めるようにする必要性を感じています。
今後は「進む」という指示を与えたQRコードを農地内に貼って、進ませる方法なども考えています。

CuGoの活用で今後目指したいこと
ずばり「ロボットを活用した作物の生育状況の把握」です。
現在開発されている農業ロボットの多くは、収穫や運搬のサポートロボットだと思います。
一方で、そうした収穫や運搬だけではなく、作物の生育状況を観察し把握することは非常に重要な仕事になります。
Quantomicsは、そうした作物の状況把握に注力することで、農作業の負担軽減と農業DX化を推進したいと考えています。

今回開発した自律走行型作物数カウントロボットは作物のカウントがメインテーマですが、作物の病気をいち早く発見することにも使いたいという話も頂いており、応用できると考えています。

多量のデータがある方がデータ解析の精度が上がるのは当然ですが、一方で、現実的には撮影可能な範囲のデータで解析の精度を向上させることも必要です。作物のカウント以外にも、例えばトマトの色や、熟度を上げる必要がある時と必要でない時の判断等が出来るようになればと考えています。

そのためにはどれだけうまくカメラを使って撮影ができるかが重要です。
難易度が高いため運用に耐えられるレベルを目指してこれから実験を繰り返していくことになりますが、CuGoのような農地で使用可能で、かつ改造も出来る足回りプラットフォームを入手できたため、様々な実験に応用できそうだと楽しみに思っています。