2022/02/24 12:22




農業ロボットの開発を数多く手掛ける東京大学大学院農学生命科学研究科・環境工学専攻海津裕准教授

はじめに
海津教授は、これまでスマート農業を推進するため、農業機械の自動化や知能化に取り組んできました。
現在開発を進める農業ロボット開発のために
・CuGo 活用ロボット開発の背景
・CuGo導入に至った背景
・導入時に感じた点や使い心地
・導入後の効果
についてお話をお伺いしました。

CuGo 活用ロボット開発の背景
現在4種類の農業ロボットでCuGoを活用したテスト機を開発しています。CuGoを利用し始めた最初のきっかけは、除草機ロボットの開発を開始したことでした。横浜で有機栽培の農家をしている友人から「除草が特に大変で、ロボットで何とかならないか」という話を聞き、除草ロボットの開発を始めました。



農家さんによると、畑の雑草の成長スピードは早く、雑草が大きくなる前に頻繁に草取りをしなければならないのが
とても大変なのだそうです。全国に除草に苦労している農家の方々はたくさんいらっしゃり、どうにか自動化できないかと考えました。

ロボット技術を活用して農業の省力化、効率化、高品質化を進めることが海津教授の専門領域です。このようなスマート農業において、農業のような不整地での安定走行は重要なポイントになります。畑は平らに見えますが、小さいロボットにとっては凸凹が大きく、安定して走るのは実は簡単ではありません。



これまで走行用クローラは軍事用、運搬用などはあったものの、手ごろな値段で買えるものではなく、農地にぴったりくるプラットフォームがありませんでした。
特に今回除草したい場所は畝と畝の間の狭い通路だったため、不整地を問題なく走れることはもちろん、狭い通路でも走れること、自動走行できること、重たい雑草を載せても安定して走れることが必要でした。


従来の農業機械の開発では、動力にエンジンを使う事が主流でした。エンジンは馬力が強いものの、昨今のエネルギー環境の変化から農業分野でも電動化が進んでおり、省エネでの開発を心がける必要もありました。
このような背景から、電動で動く不整地に強い小型でかつパワフルなクローラを探し始めました。

CuGo の導入に至った理由
不整地向けクローラとして、シンプルでコストも抑えられ、カスタマイズをしやすかったこと、また走行性の高さが理由です。これまで利用していた不整地用のクローラは走行は良いものの、重たいモノを載せた時の走行性に不安がありました。

広大な農地で雑草を載せて運ぶには、重たいモノを載せても安定した走行性がポイントになった中、CuGoは耐荷重2ユニット100㎏と人を載せて運べるほどのスペックがあり、十分満足できるものでした。



実は以前所属する農業食糧工学会で初期のCuGoを見た時は、凝った作りで素晴らしい一方、コストが高くオーバースペックで導入を見送ったことがありました。その後、シンプルかつ手頃な値段になったことで、これまでなかった不整地用の足回りプラットフォームが実用化に至り、今後農業ロボット分野における活用範囲が広いと考え、導入を決めました。

製品は2020年6月にCuGoV2 を最初に購入し、2021年1月に研究のためにV1とV3も追加購入しました。V1のモーターはプーリの軸が滑ってしまうことがあったり、クローラが滑ってしまったりする問題がありましたが、V3は動力伝達がチェーンになり、プーリの軸がキー溝固定となり、また、クローラの部分の形状が改良され、走行性能が向上しました。

CuGo導入時に感じた点

農業のスマート化を進めるロボットを複数開発中

テストが進んでいる小型除草機の開発についてですが、まず取り付けてみて体感したのは、CuGoは非常に丈夫だということです。実際テスト走行で重いものを載せても安定した走りをしてくれました。


テスト走行する小型除草ロボット

一方、丈夫なため重量は1ユニット5.2㎏と想像よりはありました。難しいところだとは思いますが、今後軽量化も進めば、さらに良いと思います。



また、自動走行型にする際の使い勝手も良かったです。自動走行には左右にふらつかず、直進性に優れ、安定して走ること、またターン時には素早く応答することが重要なのですが、CuGoはこれを全てクリアしていました。

CuGo導入後の効果
今は特に仕事量(負荷)によって安全に動く範囲をテストしています。
負荷を掛けすぎてモーターリアボックスの修理が必要になりましたが、すぐに取り換えできる点も良く、スピーディーに開発できるようになりました。


品種改良中のとうもろこしの成長観察ロボット

各農業ロボットの開発を通して、CuGoは走行性の高さ、小回りのしやすさの他に、重たいバッテリーも十分積載できる耐久性もあるため、汎用性が高いと感じました。

製品ページはこちらです。